ケタミンのサイコセラピー使用について

精神病治療セラピストが、多くの患者と対話しながらおこなう、いわゆるサイケデリックセラピーの分野では、ケタミンよりも、NDMA、LSD等の先進的薬物の方が決定的に優れているとされています。
というのも、ケタミンは、サイケデリックセラピーのためのセットやセッティングを全く超越してしまうからなのだといわれています。
しかし、それであるが故に、あの精神医学界で絶大なる功績と偉大なる権威を誇るリリー博士などの言う、メタプログラミング用の先進的ドラッグとしては、とても大きな効果を期待することができるというものである。
また、前述のように、精神分裂病の治療薬、アルコール依存症の治療薬、あるいは脳内生理学的に、電気ショック療法的な効果が期待できるため、強度の鬱病の治療薬としての研究などがおこなわれたりもしている。
ケタミンは、いまやその未知の臨床的治療効果が全世界的な最先端で模索されているきわめてホットなドラッグとなっているのである。

麻酔薬としてのケタミン

呼吸も抑制され、高用量ではいわゆる吸入麻酔薬ほどではないが、呼吸停止(死)をまねくこともあるのである。
回復時は覚醒にしばしば数時間を要し、不快な夢や幻覚等が起こることもある。時にはこのようなまるで好ましくないフラッシュバック現象が、数日後あるいは数週間後に再び現れることもある。
回復時に30歳以上の成人の半数はせん妄や興奮を起こし、また、視覚障害を訴える、とも報告されている。
この症状は女性でも起こりやすいとされているが、小児や老人では極端に少ない。ある意味当然とは言えるのであるが。
前述したように一般的には手術時の麻酔に利用されることがほとんどではあるがが、東ヨーロッパやロシアでは、アルコール中毒等の治療薬としての研究が進められている。
さらに、最近の日本の最先端臨床報告では、癌性の痛みや神経障害による痛みの治療に、また、国立神経研究所の西川徹博士によってはさらに先進的な精神分裂症の治療薬としての可能性も見出されている。

ケタミンの鎮痛効果

ケタミンがいずれにしても傾眠状態(麻酔下で睡眠傾向の亢進、あるいは睡眠時間の延長)のもとで強力な鎮痛効果(皮膚、筋肉、骨など主に体表面の痛みを強く抑える)がみられるものの、筋弛緩剤に乏しく、カタレプシー状態(?様状=四肢がさまざまな位置に、しばらくの間固定されてしまう病的な状態)を示す特徴がある。
ケタミンは、手術及び検査のための麻酔として、大手術時に笑気麻酔等の吸入麻酔薬と併用されるのが一般的である。
併用される理由としては、ケタミンの麻酔時間が短いこと、吸入麻酔薬は、循環器系、呼吸器系に対して、ケタミンよりさらに危険性が高い事、ケタミンの効果が現われるまでの時間がきわめてスムーズであること、
前述のようにPCPに比べ、比較的、幻覚作用が穏やかな事、安価であることなどがあげられる。
循環器、呼吸器系などに対する作用としては、一過性の血圧上昇と頻脈が認められ、脳脊髄液量と脳血流量の増加が認められる。

脳の神秘と辺緑系

マクリーンは、側頭葉てんかん患者を襲う「辺緑系の嵐」に魅せられている。
「発作の最中に、患者は脈絡もなしに、大発見をしたと感じるのですーーこれこそ真理だ、絶対心理だ。これ以外に真理はない、という天啓の感じです」
また、脳のホログラム理論で知られているカールプリブラムは、「側頭葉の扁桃核の近くの損傷は、神秘体験に似たものを引き起こすことがある」と述べている。
大脳新皮質による事実の検査をへないで、辺緑系は全く独自に、既視感や未視感、突然の記憶、白昼夢、神のお告げ、そして宗教的な回心さえも生み出すらしい。
マクリーンはいう、「脳で私が一番悩んでいるのは、この読み書きもできない原始的脳、つまり編緑系が、実在だ、真実だ、そして重要だといった感覚を提供しているからですよ」
「脳がこんがりますよ、だってこの無口な脳が陪審員のような顔をして、上にいる素晴らしいコンピューターである新皮質に「よろしい、これは信じてよい」などと教えるのですから」
「いったいこれが信じられますか?私はこの逆転現象から論理的に抜け出せないのです」
辺緑系でおもしろい事実はほかにもある。例えば分裂病の原因には、脳の器質的な異常、遺伝、ドーパミンなどの化学物質の異常、自己免疫説、幼児期の対人関係のトラウマ、などの諸説の他に、「分裂病ウイリス」が存在するという根強い説がある。
そして、その候補とみられるウイルスのひとつは、辺緑系に取り付く傾向があるという。
ともかく、辺緑系は、未知な部分が多い領域なのである。

ケタミンと神経伝達システム

ここで少し神経伝達のシステムについて説明しておこう。
例えば、脳のある領域が興奮もしくは抑制されるメカニズムは、興奮性ニューロンと抑制性ニューロンが複雑なネットワークを構成し、総合的に興奮または抑制という反応がおこると考えられている。
例えば、アルコールを飲むと、みかけ上興奮がおこる。アルコールの薬理作用は麻酔薬同様、中枢神経系の抑制で大脳皮質、小脳、延髄の順で下向性抑制が生じる。
アルコールによる初期の興奮はこれらの領域における抑制性制御機構の抑制、すなわち脱抑制による興奮である。
血中のアルコール濃度が増加するにしたがって、あらゆる中枢神経の抑制がおこり、麻酔状態、昏睡状態に陥っていく。
ケタミンは全身麻酔薬にもかかわらず、視床ー新皮質系および皮質下領域には抑制に作用する一方、辺緑系および網様体系を活性化し、両者の間に機能的解離を生む。
その点は、脳波所見からも確認されており、大脳皮質が除波化(深い睡眠中の脳波、ゆっくりとした大きな波を描く)していても大脳辺緑系では覚醒波(速くて細かい波)を示す。